オリュンポス十二神とは|ギリシャ神話の主要な神々を一覧で解説

オリュンポス十二神とは|ギリシャ神話の主要な神々を一覧で解説

ギリシャ神話には数えきれないほどの神が登場しますが、その中心にいるのが、オリュンポス山に住むとされた「オリュンポス十二神」です。ゼウスやアテナ、アポロンといった有名な神々は、ほとんどがこの十二神に含まれます。

この記事では、十二神それぞれの役割や象徴、家族関係を一覧にし、全体像をつかめるようにまとめました。各神の詳しい神話は、神ごとの個別記事で取り上げていく予定です。

対象読者:ギリシャ神話の主な神々を、まず一通り知っておきたい方。

オリュンポス十二神とは

オリュンポス十二神は、ティタン(ティーターン)族との戦い(ティタノマキア)に勝ったゼウスを中心に、世界を治めるようになった神々です。ギリシャ北部の実在の山、オリュンポス山の頂に宮殿を構えて暮らしていると考えられていました。

十二神の数え方

「十二」という数は決まっていますが、どの神を数えるかには揺れがあります。

  • かまどの女神ヘスティアを入れる数え方と、代わりにブドウ酒の神ディオニュソスを入れる数え方がある
  • ヘスティアがディオニュソスに席を譲った、という話も後世に語られている
  • アテナイのパルテノン神殿の東側フリーズ(帯状の浮き彫り)には、ヘスティアではなくディオニュソスを含む12柱が刻まれている(アイキャッチ画像はその一部)
  • 冥界の王ハデスはゼウスの兄で有力な神ですが、地下の冥界に住むため、ふつうは十二神に含めない

この記事では、両方の数え方に対応できるよう、ヘスティアとディオニュソスの両方を紹介し、ハデスにも補足で触れます。

十二神の一覧

ギリシャ名 ローマ名(英語名) 司るもの 主な象徴 親
ゼウス ユピテル(ジュピター) 天空、雷、神々の王 雷霆、鷲、樫の木 クロノスとレア
ヘラ ユノ(ジュノー) 結婚、出産、家庭 孔雀、ザクロ、王冠 クロノスとレア
ポセイドン ネプトゥヌス(ネプチューン) 海、地震、馬 三叉の矛、馬、イルカ クロノスとレア
デメテル ケレス(セレス) 農業、穀物、豊穣 麦の穂、松明 クロノスとレア
ヘスティア ウェスタ(ヴェスタ) かまど、家庭の火 かまどの火 クロノスとレア
アテナ ミネルウァ(ミネルヴァ) 知恵、戦略、技芸 フクロウ、オリーブ、盾 ゼウス(とメティス)
アポロン アポロ 音楽、予言、医術、弓 竪琴、月桂樹、弓矢 ゼウスとレト
アルテミス ディアナ(ダイアナ) 狩猟、野山の獣、出産の守護 弓矢、鹿、月 ゼウスとレト
アレス マルス(マーズ) 戦争、戦いの狂気 槍、兜、犬、ハゲワシ ゼウスとヘラ
アフロディテ ウェヌス(ヴィーナス) 愛、美 鳩、バラ、ホタテ貝 ウラノス(またはゼウスとディオネ)
ヘパイストス ウルカヌス(バルカン) 火、鍛冶、工芸 槌、金床 ヘラ(またはゼウスとヘラ)
ヘルメス メルクリウス(マーキュリー) 伝令、旅人、商業、盗み 翼のあるサンダルと帽子、杖 ゼウスとマイア
ディオニュソス バックス(バッカス) ブドウ酒、演劇、陶酔 ブドウ、テュルソスの杖、豹 ゼウスとセメレ

ローマ人は自分たちの神をギリシャの神と同一視したため、同じ神に二つの名前があります。絵画のタイトルや海外の作品では、ローマ名で呼ばれていることも多いので、対応を覚えておくと便利です。

十二神の家族関係

十二神は大きく二つの世代に分けられます。

第一世代:クロノスとレアの子

ティタンのクロノスとレアから生まれた兄弟姉妹です。父クロノスに飲み込まれ、末っ子のゼウスに救い出されました。

神 立場
ヘスティア 長女。最初に飲み込まれ、最後に吐き出された
デメテル 次女。ゼウスとのあいだに娘ペルセポネをもうける
ヘラ 三女。ゼウスの正妻
ハデス 長男。冥界の王(十二神には通常含まれない)
ポセイドン 次男。海の王
ゼウス 末っ子。神々の王

第二世代:ゼウスの子

残りの多くはゼウスの子どもたちです。母親がそれぞれ違うのが特徴で、ここにゼウスの数多くの恋が表れています。

神 母 生まれ方の特徴
アテナ メティス 母ごと飲み込んだゼウスの頭から、武装した姿で生まれた
アポロン、アルテミス レト ヘラの妨害を受けながら、デロス島で生まれた双子
アレス ヘラ ゼウスとヘラの正式な子
ヘパイストス ヘラ ヘラがひとりで生んだとする説もある
ヘルメス マイア 洞窟で生まれ、その日のうちに大事件を起こす
ディオニュソス セメレ(人間) 母の死後、ゼウスの太ももの中で育って生まれた

アフロディテだけは位置づけが特殊です。ヘシオドスの『神統記』では、ウラノス(クロノスの父)の体の一部が海に落ちてできた泡から生まれたとされ、ゼウスより古い世代になります。一方、ホメロスの作品では、ゼウスとディオネの娘とされています。

夫婦・恋人の関係

関係 内容
ゼウスとヘラ 正式な夫婦。ゼウスの浮気とヘラの嫉妬が多くの神話の発端になる
ヘパイストスとアフロディテ 夫婦。ただし夫婦仲はよくない
アレスとアフロディテ 恋人。ヘパイストスに見破られ、見えない網で捕らえられる
ポセイドンとアンピトリテ ポセイドンの妻は海の女神で、十二神には入らない
ディオニュソスとアリアドネ テセウスに置き去りにされたクレタの王女を妻にする

なお、アテナ、アルテミス、ヘスティアの三柱は、結婚しない処女神として知られています。

十二神それぞれの概要

ここでは各神の特徴を短く紹介します。詳しい神話やエピソードは、個別記事で扱う予定です。

ゼウス

天空と雷を司る神々の王です。父クロノスを倒して世界の支配者となり、神々と人間の秩序を守ります。一方で数多くの女神や人間の女性と恋をし、その子どもたちが多くの英雄になりました。牛に姿を変えてさらった王女エウロペの名は、「ヨーロッパ」の語源とされています。

ヘラ

ゼウスの姉であり正妻で、結婚と家庭を守る女神です。夫の浮気相手やその子どもたちに激しい怒りを向け、英雄ヘラクレスに数々の試練を与えたことで知られます。英語の「June(6月)」は、ローマ名ユノに由来するといわれます。

ポセイドン

海と地震、馬を司る神で、三叉の矛(トライデント)で大地を揺るがします。アテナとアテナイ(現在のアテネ)の守護神の座を争って敗れた話や、英雄オデュッセウスの帰郷を妨げた話が有名です。

デメテル

穀物と農業を司る豊穣の女神です。娘ペルセポネを冥界の王ハデスにさらわれて悲しみ、地上の作物が実らなくなったという神話は、季節の移り変わりの起源として語られます。英語の「cereal(穀物)」は、ローマ名ケレスに由来します。

ヘスティア

かまどの火を司る、家庭の守り神です。争いを好まず、神話にはほとんど登場しませんが、家々や都市の中心にある火の神として広く敬われ、犠牲の最初の分け前を受ける神とされました。ローマではウェスタとして、巫女たちが聖なる火を守り続けました。

アテナ

知恵と戦略、機織りなどの技芸を司る女神で、ゼウスの頭から武装した姿で生まれました。都市アテナイの守護神で、パルテノン神殿は彼女に捧げられたものです。聖鳥のフクロウは、知恵の象徴として今も親しまれています。

アクロポリスの丘に建つパルテノン神殿の西側正面

アテナに捧げられたパルテノン神殿(アテネ)。写真:George E. Koronaios/Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)

アポロン

音楽、予言、医術、弓を司る神で、のちに太陽神とも同一視されました。デルポイ(デルフォイ)の神託は古代ギリシャで最も権威のある予言でした。愛したニンフのダプネが月桂樹に姿を変えたことから、月桂樹を聖木としています。

アルテミス

アポロンの双子の姉(妹とする説もあります)で、狩猟と野山の獣を司る処女神です。のちに月の女神とも同一視されました。水浴びを見てしまった狩人アクタイオンを鹿に変えた話など、厳しい一面も伝わっています。

アレス

戦争の荒々しさや狂気を司る神です。知略で戦うアテナとは対照的に、暴力的な戦いの象徴とされ、神話の中では父ゼウスにさえ疎まれています。ローマ名マルスは「Mars(火星)」や「March(3月)」の由来です。

アフロディテ

愛と美の女神で、海の泡から生まれたとされます。トロイアの王子パリスが三女神の中から「最も美しい」と選んだことが、トロイア戦争のきっかけになりました。ローマ名ウェヌス(ヴィーナス)は金星の名前にもなっています。

貝殻に乗って海から現れるヴィーナスを描いた絵画

ボッティチェッリ『ヴィーナスの誕生』(1485年ごろ、ウフィツィ美術館所蔵)。画像:Wikimedia Commons(パブリックドメイン)

ヘパイストス

火と鍛冶を司る職人の神で、十二神の中で唯一、足が不自由な姿で描かれます。生まれてすぐオリュンポスから投げ落とされたという話が伝わっています。英雄アキレウスの盾や、最初の女性パンドラをつくったのも彼です。英語の「volcano(火山)」は、ローマ名ウルカヌスに由来します。

ヘルメス

神々の伝令で、旅人や商人、羊飼い、そして泥棒の守り神でもあります。生まれたその日に揺りかごを抜け出し、兄アポロンの牛を盗んだうえ、亀の甲羅から竪琴を発明しました。死者の魂を冥界へ案内する役目も担います。ローマ名メルクリウスは水星の名前です。

幼いディオニュソスを腕に抱くヘルメスの大理石像

プラクシテレス作と伝わる『幼いディオニュソスを抱くヘルメス』(オリンピア考古学博物館)。写真:Dwaisman/Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)

ディオニュソス

ブドウ酒と陶酔、演劇を司る神です。十二神の中で唯一、人間の女性を母にもち、母セメレがゼウスの真の姿を見て焼け死んだあと、ゼウスの太ももの中で育ちました。彼を祀るアテナイの祭り(ディオニュシア祭)で上演された劇が、ギリシャ悲劇・喜劇のもとになりました。

補足:ハデスについて

ハデスはゼウス、ポセイドンの兄で、三兄弟で世界を分けたときに冥界を受け持ちました。地下の世界に住むため、オリュンポス十二神には通常含まれませんが、重要度では十二神に劣らない神です。

項目 内容
ローマ名 プルト(プルートー)
司るもの 冥界、死者、地下の富
主な象徴 二叉の矛、姿を隠す兜、番犬ケルベロス
妻 ペルセポネ(デメテルの娘)

冷酷な死神のように思われがちですが、神話の中では約束を守る公正な王として描かれることも多い神です。

十二神を知るためのポイント

象徴(アトリビュート)で見分ける

絵画や彫刻では、神々は持ち物や一緒にいる動物で見分けられるように描かれます。

象徴 神
雷、鷲 ゼウス
孔雀 ヘラ
三叉の矛 ポセイドン
兜と盾、フクロウ アテナ
竪琴、月桂冠 アポロン
弓矢と鹿、額の三日月 アルテミス
翼のある帽子とサンダル ヘルメス
ブドウの冠 ディオニュソス
槌と金床 ヘパイストス
貝殻、鳩 アフロディテ

惑星や言葉に残る名前

ローマ名は、太陽系の惑星の英語名にも使われています。

惑星 英語名 対応するギリシャの神
水星 Mercury ヘルメス
金星 Venus アフロディテ
火星 Mars アレス
木星 Jupiter ゼウス
海王星 Neptune ポセイドン

土星(Saturn)はゼウスの父クロノスに、天王星(Uranus)は祖父ウラノスに対応しており、十二神ではありません。

神々は「完璧ではない」

ギリシャ神話の神々は、強大な力をもちながらも、嫉妬や怒り、恋に振り回される人間的な存在として描かれます。ひとりの神を「善」「悪」で決めつけず、場面ごとに違う顔を見せる存在として読むと、神話をより楽しめます。

各神の詳細記事について

この記事を入口として、十二神それぞれの詳しい神話(誕生の物語、主なエピソード、関わる英雄、芸術作品での描かれ方など)を個別記事で順次紹介していく予定です。公開した記事から、この記事の各神の項目にリンクを追加していきます。

まとめ

  • オリュンポス十二神は、ゼウスを中心にオリュンポス山に住むとされたギリシャ神話の主要な神々
  • ヘスティアとディオニュソスのどちらを数えるかで顔ぶれが変わる。ハデスは通常含まれない
  • クロノスとレアの子である第一世代と、ゼウスの子である第二世代に分けると関係を整理しやすい
  • ギリシャ名とローマ名、象徴となる持ち物や動物を押さえておくと、絵画や物語の理解に役立つ

まずは十二神の名前と役割を大まかに押さえておけば、個々の神話もぐっと読みやすくなります。気になった神から、個別記事で詳しく見ていきましょう。

アイキャッチ画像:パルテノン神殿東側フリーズのポセイドン、アポロン、アルテミス(アクロポリス博物館、Deiadameian/CC BY-SA 4.0/Wikimedia Commons)