インボイスの2割特例は2026年分で終わり、2027年分からは3割特例に(小さな作り手の消費税)

インボイスの2割特例は2026年分で終わり、2027年分からは3割特例に(小さな作り手の消費税)

インボイス(適格請求書)の登録をして、免税事業者から課税事業者になった個人事業主には、消費税の納付額を軽くする「2割特例」があります。この2割特例は、個人事業主では2026年分の申告で終わります。その後を継ぐ形で、令和8年度の税制改正により、2027年分と2028年分の2年だけ使える「3割特例」が設けられました。

この記事では、ハンドメイド作家や小さなお店のように、売上が1,000万円以下でインボイスに登録している個人事業主に向けて、何が変わるのか、納付額がどのくらい増えるのか、簡易課税とどちらを選ぶかを整理します。国税庁の「令和8年度税制改正特集」のページをもとに、2026年10月31日に確認した内容です。税の扱いは人によって違うので、実際の申告では国税庁の案内や税理士・税務署で確かめてください。

対象読者:インボイスに登録している(または登録を考えている)個人のハンドメイド作家・小さなお店の方。

1. いつ、何が変わるのか

2割特例は2026年分まで

2割特例は、インボイスの登録で免税事業者から課税事業者になった人が、納める消費税を「売上にかかる消費税の2割」にできる特例です。国税庁の経過措置の一覧では、「令和8年9月30日が属する課税期間まで」とされています。

個人事業主の課税期間は1月〜12月なので、2026年(令和8年)分が最後です。2027年3月の確定申告で出す2026年分まで、2割特例を使えます。

2027年分・2028年分は3割特例

2割特例の後に、3割特例が使えるようになります。

項目 内容
使える年 2027年(令和9年)分と2028年(令和10年)分の2年だけ
納める消費税 売上にかかる消費税の3割
対象 インボイスの登録で免税事業者から課税事業者になった個人事業主(法人は使えない)
主な条件 基準期間(2年前)と特定期間(前年1〜6月)の課税売上高が1,000万円以下で、インボイスの登録を受けていること
届出 前もっての届出は不要。確定申告書の所定の欄に、3割特例を使うことを書く

基準期間は、2027年分なら2025年、2028年分なら2026年です。この年の課税売上高が1,000万円を超えていると使えません。前の年の1月〜6月(特定期間)の課税売上高が1,000万円を超えている場合も使えません(給与の支払額で判定することもできます)。

3割特例を使うのに、前もっての届出は要りません。確定申告書の所定の欄に、3割特例を使うことを書くだけです。

3割特例が使えない人

主なものは次のとおりです(全部は、国税庁のインボイスQ&A 問115-2「3割特例の適用ができない課税期間」にあります)。

  • 法人
  • インボイスの登録をしていない課税事業者
  • 基準期間の課税売上高が1,000万円を超える人
  • 課税期間を短くする届出をしている人
  • 高額な固定資産(調整対象固定資産や高額特定資産)を買ったために、免税事業者に戻れない人
  • 相続によって課税事業者になる年

2. 納める消費税はいくら増えるか

計算の例

税込の売上が年330万円(税抜300万円)の作家で計算してみます。売上にかかる消費税は30万円です。材料や梱包材などの仕入れは税込88万円(うち消費税8万円)とします。

2割特例(2026年分まで)  :30万円 × 20% =  6万円
3割特例(2027・2028年分) :30万円 × 30% =  9万円
簡易課税(製造業・第3種) :30万円 × (1 − 70%) =  9万円
簡易課税(小売業・第2種) :30万円 × (1 − 80%) =  6万円
一般課税(本則)     :30万円 − 8万円 = 22万円

※国税と地方税を合わせた概算です。実際の申告では国税と地方税を分けて計算し、端数の処理もあります。

この例では、2026年分から2027年分に変わると、納める消費税が6万円から9万円へ、3万円増えます。2割特例が終わると負担は増えますが、いきなり一般課税(この例では22万円)になるわけではありません。

仕入れが少ない作り手ほど特例が効く

一般課税では、売上の消費税から仕入れの消費税を引きます。材料費の割合が小さい作品(手間が値段の大部分を占めるもの)ほど、引ける額が少なく、一般課税では納める額が多くなります。2割特例や3割特例は、仕入れの額に関係なく売上の消費税だけで決まるので、こうした作り手には有利です。

3. 3割特例と簡易課税、どちらを選ぶか

簡易課税のしくみ

簡易課税は、仕入れの消費税を実際の額ではなく、業種ごとに決まった割合(みなし仕入率)で計算する方法です。

区分 主な業種 みなし仕入率 納める消費税(売上の消費税に対して)
第1種 卸売業 90% 10%
第2種 小売業など 80% 20%
第3種 製造業など 70% 30%
第4種 飲食店業など 60% 40%
第5種 サービス業など 50% 50%
第6種 不動産業 40% 60%

作り手の場合

  • 自分で作った作品を売る(製造業・第3種):簡易課税でも納める額は売上の消費税の30%で、3割特例と同じです。3割特例のほうが、事業区分を分けて計算する手間がなく、2年続ける縛りもありません
  • 仕入れた商品をそのまま売る(小売業・第2種):簡易課税なら20%で、3割特例より有利です
  • ワークショップや修理などのサービスが多い(第4種・第5種):簡易課税では40〜50%になるので、3割特例のほうが有利です

作品の販売とワークショップの両方をしている場合など、売上の中身で有利な方法は変わります。業種の区分は、作り方や売り方によって変わることがあるので、迷ったら税務署や税理士に確かめてください。

簡易課税に移るときの届出

簡易課税を使うには、原則として、使いたい年が始まる前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を出す必要があります。また、一度選ぶと原則2年間は続けなければなりません。

令和8年度の改正では、2割特例や3割特例を使った翌年に限り、その年の申告期限までに届出を出せば、その年から簡易課税を使えるようになりました。国税庁の例では、2028年分に3割特例を使った個人事業主が2029年分から簡易課税にする場合、届出の期限は2030年4月1日です。

4. 今のうちに確かめておきたいこと

1. 自分がインボイスに登録しているか、登録日はいつか
2. 2025年と2026年の課税売上高、前年1〜6月の課税売上高が1,000万円以下か(3割特例の条件)
3. 自分の売上が簡易課税のどの区分に当たるか(作品の販売・仕入れ品の販売・サービス)
4. 2027年分は「3割特例」と「簡易課税」のどちらが少なくなるかを試算する
5. 消費税の納付が増える分を、値付けや資金の準備に入れておく

なお、インボイスに登録していない(免税事業者のままの)人は、そもそも消費税を納める必要がないので、この特例は関係ありません。ただし、取引先が事業者で、インボイスを求められる場合は、登録するかどうかの判断が必要になります。

5. まとめ

  • 2割特例は、個人事業主では2026年分の申告が最後
  • 2027年分と2028年分は、売上の消費税の3割を納める「3割特例」が使える(個人事業主だけ。基準期間と特定期間の課税売上高が1,000万円以下。届出は不要)
  • 税込330万円の売上なら、納める消費税はおよそ6万円から9万円に増える
  • 自分で作った作品を売る人(製造業)は、簡易課税でも3割で同じ。仕入れ品の販売が中心なら簡易課税、サービスが中心なら3割特例が有利になりやすい
  • 2割特例・3割特例を使った翌年は、申告期限までに届出を出せばその年から簡易課税に移れる

参考:国税庁「令和8年度税制改正特集(インボイス制度関係)」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice-review/index.htm ・国税庁「インボイスQ&A 問115-2」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/115-2.pdf (2026年10月31日に確認)

アイキャッチ画像:Image by 777546 from Pixabay