ネットショップの特商法の表記で、自宅の住所を出さずに売る方法

ネットショップの特商法の表記で、自宅の住所を出さずに売る方法

ネットで作品や商品を売るとき、多くの場合「特定商取引法に基づく表記」(特商法の表記)に、名前・住所・電話番号を載せる必要があります。一人で作って売っている人にとって、自宅の住所や個人の電話番号をネットに出すのは不安なものです。

この記事では、消費者庁の「特定商取引法ガイド」のQ&Aをもとに、自宅の住所を出さずに売るための方法を3つに分けて整理します。2026年10月31日に確認した内容です。法律の解釈にかかわるので、迷ったときは消費者庁のガイドや、使っているサービスのヘルプで確かめてください。

対象読者:ネットショップやハンドメイドの販売サイトで、個人として作品・商品を売っている方。

1. そもそも表記が必要な人

「業として」売っていれば個人でも必要

特商法の表記が必要なのは、「販売業者」として通信販売をする人です。「業として」は、一般に、利益を得るつもりで、くり返し続けて売ることと説明されています。法人だけでなく、個人事業主も対象です。

家の不用品を一度だけフリマアプリで売るような場合は当てはまりませんが、作品を作ってくり返し売っているなら、個人でも表記が必要と考えておくのが安全です。

載せる主な項目

・販売業者の名前(個人なら戸籍上の氏名)
・住所
・電話番号
・販売価格、送料
・代金の支払い時期と方法
・商品の引き渡し時期
・返品についての決まり(返品特約)

このうち、自宅の住所と電話番号を出さずにすむ方法が、次の3つです。方法2・3では、名前(戸籍上の氏名)はページに出ます。

2. 自宅の住所を出さない3つの方法

方法1:「請求があれば遅滞なく開示します」と書いて省略する

消費者庁のQ&A(Q15・Q17)では、次の条件を満たせば、住所と電話番号(Q15では氏名も)の表示を省略できるとしています。

  • 消費者から請求があれば、表記の内容を書面や電子メールなどで「遅滞なく」提供すると、ページに書いておく
  • 実際に請求があったとき、すぐに提供できる体制を整えておく

「遅滞なく」は、一般に、お客さまが買うかどうかを決める前に、十分な余裕をもって届けることと説明されています。請求されたのに開示しないと違法になるおそれがあります。

表記の例です。

住所・電話番号:ご請求があれば、電子メールで遅滞なくお知らせします。
連絡先:shop@example.com

この方法は、自分のサイトでも使えます。ただし、請求されれば自宅の住所を伝えることになるので、「ページには出ないが、求められれば教える」形です。

方法2:販売サービスの住所を載せる(BASE・STORES など)

消費者庁のQ&A(Q18)では、条件を満たせば、販売の場を提供する事業者(プラットフォーム事業者)の住所と電話番号を載せてもよいとしています。主な条件は次のとおりです。

  • 取引がそのプラットフォームの上で行われていること
  • その住所と電話番号を連絡先として使うことに、出品者とプラットフォーム事業者の間で合意があること
  • プラットフォーム事業者が、出品者の現住所と本人名義の電話番号を把握していて、確実に連絡が取れること

この考え方にもとづいて、ネットショップ作成サービスの中には、個人の出品者向けに住所と電話番号を非公開にできる設定を用意しているところがあります。下の表は、各社の発表やニュースをもとにしたものです(2026年10月31日時点で、BASE・STORES の最新のヘルプは確認できていません)。

サービス 内容
BASE 2022年1月に、個人のショップオーナー向けに所在地と電話番号を非公開にできる設定を始めたと発表
STORES 2022年5月に、個人・個人事業主向けに所在地と電話番号を非公開にできる設定を始めたと発表。非公開にすると運営会社の所在地と電話番号が表示される
メルカリShops 本人確認を済ませた個人事業主のショップなら、運営会社の住所と電話番号を表示できる(法人は対象外)

minne・Creema などのハンドメイドマーケットも、それぞれ表記の決まりや設定があります。どのサービスでも、設定の場所や条件は変わることがあるので、使っているサービスのヘルプで確かめてください。

方法3:バーチャルオフィスの住所を使う

同じQ18では、バーチャルオフィスの住所と電話番号も、条件を満たせば使えるとしています。条件は方法2と同じで、バーチャルオフィスの運営会社と「連絡先として使う」ことに合意していて、運営会社があなたの現住所と電話番号を把握し、確実に連絡が取れることです。

自分のサイト(WordPress など)で売る場合は、方法2のような「運営会社の住所」がないので、方法1かこの方法3になります。バーチャルオフィスは月額の費用がかかるので、売上の規模と合わせて考えます。

3. ハマりやすい点

私書箱は「住所」にならない

消費者庁のQ&A(Q19)では、私書箱を書いても「住所」を表示したことにはならないとしています。住所は、営業の活動の拠点を指すためです。

番地を一部だけ省くのは不可

「○○市○○町」までで番地を省くような、不正確な住所の表示は認められていません。出すなら正確に、出さないなら方法1〜3のどれかで、と考えます。

連絡が取れないと意味がない

方法2・3は、出品者かプラットフォーム・バーチャルオフィスの運営会社のどちらかが不誠実で、お客さまから連絡が取れない事態になると、表示の義務を果たしたことにならない、とされています。運営会社からの連絡を見落とさないようにし、メールにはすぐ返事ができるようにしておきます。

名前は屋号だけでは足りない

個人の場合、名前は戸籍上の氏名(商業登記をしていれば商号)を書きます。作家名・屋号・ショップ名だけでは足りません(Q16)。方法2・3では、氏名はページに出ます。氏名も出したくない場合は、方法1で住所・電話番号と一緒に省略できます(Q15)が、請求があれば伝えることになります。

返品のときは住所を伝える

ページに住所を出さなくても、返品を受けるときは、お客さまに返送先として住所を伝えることになります。メルカリShops のお知らせでも、返品のときは取引メッセージで住所を伝える必要があるとしています。

4. 売り場ごとの選び方

売り場 使える方法
BASE・STORES などのネットショップ作成サービス 方法2(非公開の設定)がいちばん手軽。方法1も使える
minne・Creema などのハンドメイドマーケット 各サービスの決まりと設定に従う
自分のサイト(WordPress+決済など) 方法1(請求があれば開示)か、方法3(バーチャルオフィス)

5. まとめ

  • 作品をくり返し売っているなら、個人でも特商法の表記が必要と考えておく
  • 自宅の住所と電話番号は、「請求があれば遅滞なく開示」と書いて省略する、販売サービスの住所を載せる、バーチャルオフィスの住所を使う、のどれかで出さずにすむ
  • BASE・STORES などには、個人向けに住所と電話番号を非公開にする設定がある
  • 私書箱は住所にならない。番地だけ省くのも不可。名前は屋号だけでは足りず、戸籍上の氏名を書く(方法1なら請求時に開示する形で省略できる)
  • どの方法でも、お客さまから確実に連絡が取れることが前提

参考:消費者庁「特定商取引法ガイド 通信販売広告Q&A」(Q15〜Q19) https://www.no-trouble.caa.go.jp/qa/advertising.html ・「通信販売広告について」 https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/mailorder/advertising.html ・メルカリShops のお知らせ https://jp-news.mercari.com/mercari-shops/info/30169 ・ネットショップ担当者フォーラム(BASE・STORES の非公開設定) https://netshop.impress.co.jp/node/9760 (2026年10月31日に確認)

アイキャッチ画像:Image by _Alicja_ from Pixabay